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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(あ)1367号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人水野正夫の負担とする。

理由

弁護人大橋誠一の上告趣意について。

第一点 新刑訴四九五条三項によれば、未決勾留日数を本刑に法定通算する場合には未決勾留の一日を金額の二十円に換算すべきこと、及び罰金等臨時措置法七条四項によれば、刑訴四九五条三項中「二十円」とあるは「二百円」とすると改められたことは、所論のとおりである。これは、すでに執行された未決勾留の日数を後になって罰金等の金額に換算する場合の標準を定めたものであり、本件の場合のごときは将来罰金を完納することができないときにその罰金額を労役場に留置する日数に換算する場合の規準を予め判決において定めるものである。前者は日数から金額への、後者は金額から日数への換算を目的とする点においては甚だ相似たところがあるから、抽象的な立法論としては、所論のいうように、両者について同一の規準を法定することが合理的であり適当であると言うこともできよう。しかしながら、法律は上述のように前者については、その規準を数学的に法定して、全く当局者(刑の執行者)の自由裁量を容れる余地を残していないが、後者については、刑法一八条一項において「罰金ヲ完納スルコト能ハザル者ハ、一日以上二年以下ノ期間之ヲ労役場ニ留置ス」と定め、該法定期間の範囲内において裁判官が自由裁量をもって定め得るものとしているのである。それ故、原判決には所論の違法はない。

第二点 異る事件を対比して量刑の標準に所論のような差別があるとしても、それが所論憲法の規定に違反するものとすることはできない。これはすでに判例に示したとおりである。

被告人水野正夫、同三宅正志の上告趣意について。

所論は、量刑不当、事実誤認の主張を出でないのであって、刑訴四〇五条に定める上告理由に当らない。

よって同四〇八条、一八一条により全裁判官の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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